入学したての時はとても大きく威厳が漂って見えた校舎が、今ではなんだかひどく古びて見える。
涙混じりの笑顔を浮かべて思い出に別れを告げる男子グループ、
卒業してしまう先輩に恋慕の情を込めた手紙を渡す女生徒
自らの育てた生徒たちの巣立ちを涙ながらに眺める年輩教師
みんな寂しげだが、どこか幸せそうだ。
春のやさしい陽光に桜の雨が反射して、辺り一面きらきら輝いている。太陽も僕たちの卒業式を祝福してくれているみたいだ。
とかなんとか書き出して思ったが、俺にはこんな美しい記憶が一切ない。
俺の卒業式はいつも雨だった。
別に雨なら雨でシトシトと降っていれば粋な気もするのだが、もうバカみたいに土砂降り。
来賓は引くくらいビチョビチョだし、体育館も引くくらい雨漏りするしの、湿気た記憶しかない。
大学の卒業式もいよいよ今月に控えているが、今のところの予報は雨だ。
しかも前日も翌日も晴れなのに、この日だけ雨とかいう凄腕スナイパーっぷりである。
天気を司る神様あたりが、卒業の「卒」の字を「傘」と間違えてるんじゃないだろうか。
それなら納得いく。いや、ごめん納得いかないわ。神様偏差値低すぎだろ。
とにかく卒業式に関してはとんでもない雨男っぷりを発揮する俺なのであった。
もう学位なんかいいから雨男から卒業したい。
大学の卒業式を最後の雨にしたい。
誰かに盗られるくらいなら強く抱いて君を壊したい。
以上、中西保志ってやっぱいいよねって話でした。
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